2023年、私は乳がんの診断を受けました。
ステージは1、腫瘍の大きさは約8mmほどでした。
きっかけは、たまたま胸に感じた違和感。
触ってみるとコリコリとした固いしこりがあり、慌てて病院で検査を受けたところ、乳がんが見つかったのです。
胸にしこりがあると、「もしかして…?」と不安になりますよね。
がんだったらどうしよう…検査ってどんなことをするの?痛くない?どのくらい時間がかかるの?
そんなふうに、いろいろと気になってしまいますよね。
この記事では、乳がんと診断された私自身の体験をもとに、乳がん発見までに受けた検査の内容や、診断されと時の心境などをお伝えします。
同じように不安を感じている方の気持ちが少しでも軽くなりますように。
そして、早期発見・早期治療のきっかけになれば幸いです。
乳がんとはどんな病気なの?

乳がんは、乳腺の組織にできるがんで、女性がかかるがんの中でもっとも多いという特徴があります。
男性にも発症することがありますが、発症数は女性に比べてごくわずかです。
代表的な症状としては、以下の4つが挙げられます。
- 胸のしこり
- 乳頭・乳輪部の湿疹やただれ
- 乳頭からの異常な分泌物
- 乳房の皮膚にくぼみ
進行すると胸の近くのリンパ節や肺・骨・肝臓・脳などに転移してしまいますが、早期発見できれば治療の選択肢が多く良い経過が期待できます。
私には、自覚症状として胸のしこりがありました。
なお、胸にしこりがあるからといって必ずしもがんだとは限りません。
乳腺症や線維腺腫といった良性の腫瘍もあります。ただし、詳しく検査してみないと良性か悪性かの判断は難しいので、胸に違和感を感じたら迷わず乳腺外科を受診しましょう。
乳がん診断、どんな検査をするの?【経験者が解説】

「乳がんの検査って、どんなことをするんだろう…。」そう思うと不安になりますよね。
市の検診などでマンモグラフィーやエコー検査を受けたことがある方も多いと思いますが、精密検査となるとそれ以外にもいくつかの検査があります。
中には針生検といって、少し痛みを伴う検査もあります。
また、検査を受けてから結果が出るまでには時間がかかることもあり、待っている間は不安な気持ちでいっぱいになることも。
ここからは私自身の体験をもとに、どんな検査があったのか、結果が出るまでにどれくらいかかったのか、どんな気持ちだったのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。
少しでも不安が和らぎ検査を受けてみようと思えるきっかけになれば幸いです。
乳がんの検査の種類について
乳がんの検査は主に下記の種類があります。
- 視診・触診
- マンモグラフィ
- 超音波(エコー)検査
- 病理検査(細胞診・組織診)
- MRI検査
- CT検査
- 骨シンチグラフィ
- PET検査
- 腫瘍マーカー検査
上記の中で、私は骨シンチグラフィとPET検査以外すべて受けました。
実際にどのような検査だったのか、痛みはあった?時間は?どんなふうに進むの?
そんな疑問にお答えできるよう、私の体験を交えながらできるだけくわしくお伝えします。
視診・触診
視診では、乳房にくぼみやただれがないか、形に左右差がないかなどを目で見て確認します。
触診では、指で乳房やわきの下をやさしく触ってしこりがあるかをチェック。しこりがある場合は、その大きさや硬さ動くかどうかなども調べます。
私がこの検査を受けたとき、視診では異常は見つかりませんでしたが、触診でしこりが見つかりました。
医師からは「おそらく良性でしょう」と言われたものの、念のためマンモグラフィとエコー検査を受けることになったのです。
マンモグラフィ
マンモグラフィは、乳房を2枚の板で挟んで圧迫しX線で撮影する検査です。乳腺の重なりを少なくして、病変の位置や広がりを詳しく調べます。
超音波では見つけにくい小さな石灰化も発見できますが、乳腺の密度が高い高濃度乳房では病変が見えにくいことがあります。
マンモグラフィ検査では、胸をしっかり押しつぶして撮影するため、痛みや息苦しさを感じることもありますが検査自体は短時間で終わります。
私の場合、右胸の脇にある丸い腫瘍が画像ではっきり写っていて、素人目からみても一目瞭然でした。ただ、この時点ではまだ乳がんと確定されたわけではありません。
超音波(エコー)検査
超音波検査は、乳房内のしこりの有無や性質・大きさ・リンパ節への転移がないかを調べる検査です。プローブという機器を乳房にあて、超音波の反射を画像で確認します。
私が超音波検査を受けたとき、左胸はすぐに終わったのに対し、腫瘍のあった右胸は時間をかけて丁寧に見ていたのが印象的でした。
技師さんの表情もどこか深刻で、助手の方と何か話している様子に不安が募ったのをよく覚えています。検査自体に痛みはありませんが、気持ちが落ち着かない時間でした。
病理検査(細胞診・組織診)
病理検査は、病変の一部を採取して顕微鏡で調べがんかどうかを診断するための検査です。検査方法には細胞診と組織診があります。
細胞診では、細い針で細胞を吸い取り顕微鏡で確認します。痛みは少なく、麻酔なしで行うことが多いです。
組織診では、局所麻酔して少し太い針で組織を採取する針生検が一般的で、必要に応じて手術で採る場合もあります。がんが見つかれば、その性質を調べて治療方針を決めていきます。
私は、マンモグラフィと超音波で腫瘍が見つかり、そのまま針生検を受けることになりました。
医師は画像を見て、がんの可能性を感じていたのかもしれません。「念のため」と言われましたが、私は動揺しきりでした。
良性のしこりだと思っていたのに、こんな大ごとになるなんて…。
局所麻酔のあと太い針で何度も腫瘍を刺され、「パチンッ」という音と振動に涙が出そうでした。
しこりがよく動いていたようで、針を何度も刺され、恐怖でぐったり。痛みはあまり感じませんでしたが、胸には針を刺した跡がくっきり残っていました。
MRI検査
MRI検査は磁気を使って体の内部を詳しく調べる検査です。
マンモグラフィや超音波では見つけにくい小さな病変やがんの広がりを確認できるため、手術前の詳しい診断に役立ちます。
胸のMRI検査はうつぶせの状態で行います。大きくて中が暗い機械に入るので圧迫感がありますが、うつぶせの姿勢のため私はそこまで怖く感じませんでした。
狭い場所や暗所が苦手な方には不安があるかもしれません。
感じ方は個人差がありますので、不安な方は医師に相談しましょう。
検査中はヘッドホンで音楽が流れますが、機械音はかなり大きいです。
私は途中から造影剤をいれて、がんの広がりを詳しく調べました。時間は造影剤なしで約20分、造影ありでさらに20分ほどでした。
CT検査
CT検査はX線を使って体の断面を撮影する検査です。さまざまな方向からX線をあて、体内の水分や脂肪・骨などのX線吸収の違いをコンピューターで処理し、画像にします。
検査内容によっては造影剤を使用します。所要時間は10~15分ほどです。
私は、乳がんと診断され大学病院に転院しました。転院先で最初に受けた検査がCT検査です。
造影剤を注射したところ、体全体がカーッと熱くなりとても緊張したのを覚えています。検査時間は15分ほどで、機械の中に出たり入ったりを繰り返します。
MRIのようにずっと狭い空間に入っているわけではないので、圧迫感はあまり感じませんでした。
骨シンチグラフィ
骨シンチグラフィは、微量の放射性薬剤を注射し骨への集まり具合を撮影する検査です。
がんが骨に転移していないかを調べる際によく用いられ、全身の骨の状態を一度に確認できます。
異常がある部位は薬剤が集まりやすく、画像に写ることで診断に役立ちます。
PET検査
PET検査は、がんが他の臓器に転移していないかを調べるための検査です。
放射性フッ素をつけたブドウ糖(FDG)を注射し、がん細胞が多く取り込む性質を利用して体内の様子を画像化します。
MRIやCTで判断が難しいときに使われることがあります。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や治療効果・再発の有無を確認するために行われます。
腫瘍マーカーとは、がん細胞などが作る特有の物質ですが、その値だけでがんの有無や進行度は判断できません。
乳がんでは診断に有用な腫瘍マーカーはありませんが、再発や転移の際にはCEAやCA15-3などが参考として使われることがあります。
私は採血して腫瘍マーカーを調べました。数値には特に異常はなかったです。
手術に必要な検査
各病院によって検査内容は異なりますが、私が転院した大学病院では、手術が可能かどうかを見極めるための検査が行われました。
私が手術前に受けた検査は以下のとおりです。
- 胸のレントゲン
- 肺活量測定
- 心電図
- 3分間の踏み台昇降
- 血液検査
上記の検査は、体に大きな負担のかかる検査ではありませんが、「手術は避けられないんだ」と実感し、強い不安や恐怖を感じました。
がんの検査も不安ですが、手術のための検査もまた気持ちが重くなるものだと感じました。
どんな手術でも、やはり怖いものですよね。
ドキドキの結果待ち…医師からの説明と心の準備

検査の結果を待つ時間はとても不安で苦しく感じることもありますよね。
乳がんの検査は以下のように段階があります。
- マンモグラフィーやエコー検査など、がんがあるかを調べる検査
- 針生検でのがんの確定やステージ・性質などの細かい検査
- MRIから手術に必要な検査までの最終的なステージや治療方針を決めるための検査
検査結果はすぐにわかるものもあれば時間がかかるものもあります。検査結果を受け止めるのにも時間が必要です。
ここでは、検査結果を待つ時間の心境や心がまえ、医師に確認しておく事についてお伝えします。
検査結果を待つ時間――心の中はざわざわ
検査が終わってから、結果が出るまでの時間。それは、予想以上に長く落ち着かないものです。
私の場合、胸にしこりがあることがわかり、マンモグラフィとエコー検査の後、組織診(針生検)を受けました。
マンモグラフィとエコー検査の結果を見て「良性か悪性かはフィフティフィフティかな。」とおっしゃったので、検査が終わってほっとした反面、結果を聞くのが怖いという不安もじわじわと広がっていきました。
針生検の検査結果は3週間ほどかかります。検査結果を待つ間ふとした瞬間に、もし悪い結果だったらどうしようと考えてしまい、気持ちがざわつく。
特に夜、ひとりになると不安が膨らみなかなか眠れなかったこともあります。
そんなときは、「不安になるのは自然なこと」と自分に言い聞かせて好きな音楽を流したり、温かいお茶を淹れたりして、気持ちを落ち着けるようにしていました。
無理に不安を消そうとするよりも、「今私は不安なんだ」と認めてあげることが、少しだけ心を軽くしてくれた気がします。
あなたの不安な気持ちをご自身で受け止めてあげてくださいね。
もし、不安に押しつぶされそうになったら信頼できる人や家族に打ち明けましょう。決して一人で抱え込まないでくださいね。
検査結果を聞いたときの気持ちと受け入れるまでの過程
診察室のドアをノックするその瞬間まで、心臓がバクバクしていたのを覚えています。
「何と言われるんだろう」「冷静でいられるかな」結果を聞くその場面は、きっと誰にとっても怖い時間だと思います。
私が医師に言われたこと。
「冷静に受け止められるわけがない。」
「今は取り乱してもいいんだよ。」
「最初は受け入れられなくても、時間の経過とともに病気と向き合う気持ちになってくるから、そのままの感情を受け入れて。」
たとえステージ1のがんであっても、がんはがん。怖いと思うのは当然のことです。受け入れるのには時間がかかります。
検査結果に動揺しても取り乱しても大丈夫。ゆっくり向き合っていきましょうね。
結果によって変わるこれから―~術式や治療方針の説明に備えよう~
乳がんと診断されても、すぐに「手術しましょう」と言われるわけではありません。
がんの広がりや性質、他の臓器への影響などを詳しく調べて、初めて治療方針が決まります。
私の場合、針生検の結果をもとに乳がんステージ1、ルミナルAと診断されました。
その後、MRIやCT・腫瘍マーカー・心電図などさまざまな検査を受け、最終的に乳房温存手術+放射線治療+ノルバデックス服用が選択されました。
検査や説明が続く中で、「私はがんと向き合っていくんだ」と実感が湧いてきたと同時に、心の整理が少しずつ進んだ気がします。
治療法を選ぶことは、命と生活のバランスを考えることでもあります。
術式や副作用・生活への影響・気持ちの持ちよう…。一つひとつの説明を、自分のペースでしっかり受け止めていくことが大切だと感じました。
がん相談支援センターに相談しよう
乳がんの診断を受け、医師からは乳がんの状態や治療方法などの詳しい説明を受けます。
手術や放射線治療・ホルモン剤の治療等、体に負担がかかる治療も多く不安は募るでしょう。
治療の不安・仕事の不安・家族に病気のことをどう打ち明けたらいいか…悩みは尽きません。
そんな時はがん相談支援センターに相談してみましょう。
がん相談支援センターでは、医師に聞きづらいことや仕事に関すること、様々な不安を相談できる場所です。
私は、がん相談支援センターで、子どもたちに病気のことをどう打ち明けたらいいか相談しました。
また、治療についての不安も相談したり、手術に向けて仕事を退職したので就労に関する相談をしたりしました。
いずれも専門の看護師さんやハローワークの方が来て丁寧にお話を聞いていただき、治療に向かう決意ができました。
患者さんだけでなくご家族の方も相談が出来るので、ぜひ利用してみましょう。
がん相談支援センターの記事はこちら
インターネットの体験談に振り回されないで

乳がんと診断されて不安な時に、ついついインターネットの体験談を検索していませんか?
私も、検査の結果を待っている時期から体験談を調べまくっていました。
ある検査をした際、怖がる私に医師はおっしゃいいました。
「もしかして、インターネットの体験談を見ていませんか?」
そういわれてとてもびっくりしたのですが、
「インターネットの体験談は、経過が複雑な方や治療が大変だった方の内容が多くなりがちです。」
「どうしてもドラマチックな内容の方が読まれやすいので、あなたのように比較的安定しているケースだと、かえって不安になってしまうかもしれませんよ。」とおっしゃったのです。
その言葉にハッとしました。もちろん、どんな経過であっても、それぞれの大切な体験には違いありません。
しかし、自分の今の状況に合った情報を正確に把握することが、いちばん安心につながると気づいたのです。
不安になりついインターネットを検索してしまう気持ちはわかりますが、かえって不安感が増してしまうこともあります。気になることは主治医に相談するようにしましょう。
あくまでもインターネットの情報は参考程度にしましょうね。
まとめ

この記事では、乳がんの検査から治療を選ぶまでの道のりを、自分の体験をもとにお伝えしました。
- 検査結果を待つ時間は、誰でも不安でいっぱいになるもの
- インターネット情報は参考程度にし今の自分に合った情報を選ぶこと
- 診断後は一歩ずつ、少しずつ、前を向いて歩いていけばいい
乳がんと向き合うことは、たしかに大変なことです。
しかし、その過程で見えてくるものや新しく気づいたこともたくさんあります。
乳がんかもしれないと不安に思っている方や、乳がんの診断をされてこの先どうなるんだろうと考えている方に少しでも参考になれば幸いです。
決して一人で抱え込まないでくださいね。
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